高度成長期の日本人が語る「禅」。英国BBCが映す40年前の日本の信仰

現在、YoutubeでイギリスBBCによる1977年制作のドキュメンタリー「The Long Search」を見ることができます。

イギリスの演出家ロナルド・エア(Ronald Eyre)が世界各地の信仰を紹介するドキュメンタリーです。

全12回であり、第9回に日本が取り上げられています。ナレーションは英語ですが、日本人の話す部分の一部は日本語のままです。

この冒頭に座禅レストランというものが登場します。
決まった時間が来ると従業員が座禅をするきまりになっているのです(ドキュメンタリー映像の8分頃)。
いわゆる社内規則でしょうね。

この店は銀座に本社をおく三笠会館のことです。実は日本で唐揚げを初めて提供した店としても有名です。

現代の「唐揚げ」が外食メニューに登場したのは昭和7年ごろ、現在の(株)三笠会館(東京・銀座五丁目)の前身「食堂・三笠」でのことです。 (略)支店は営業不振となりその赤字は本店にも打撃を与えるほど大きくなっていき、当時の料理長がこの営業不振をなんとかしようと知恵を絞り、打開策として考案したメニューが「若鶏の唐揚げ」でした
唐揚げの歴史

ネットで調べると三笠会館は失われた20年を乗り越えて今も老舗として健在なようですね。創業者の谷善之丞氏は昭和を代表する曹洞宗の僧侶、澤木興道氏の教えに影響を受けていたといわれています。

現在、
スティーブ・ジョブスが禅を愛していたという話をしたがる日本人は多いですが
じゃあ「禅」って何ですか?と問われると
具体的に答えられない人がほとんどじゃないかと思います。私も含めて。
イエス・キリストとか天使とかハロウィンについて尋ねられたほうが、まだまともな答えを返せる人が多いかもしれません。

今の日本は個人が本を読むなり調べるなり自主的に動かないと
自分たちの国の文化がわからないという、特殊な環境になっているのです。

このドキュメンタリーの中の40年前の日本人は、BBCの取材に対して禅とはどのようなものだと語っているでしょう?

BBCはまず大森曹玄氏を取材しています(8分30秒ごろ)。

大森 曹玄(おおもり そうげん、明治37年(1904年) – 平成6年(1994年)8月18日)は臨済宗の禅僧。また、直心影流剣術第15代・山田次朗吉の弟子でもあり、直心影流剣術の「法定」の指導も行った。山岡鉄舟ゆかりの高歩院の住職を務め、鉄舟についての著書もある。 wikiより

インタビューの中で仏陀とは何かと尋ねられた大森氏は
仏陀とは私である、と返し、こう説明します。

禅とは信仰の外側 崇拝するものとしてあるのではない
多くのものの基盤にあるもの
自分自身 地球
仏陀は私、誰もが仏陀
我々の命のもと
鳥も木も犬もみな仏陀。人は発展を求めて座禅をする。
座って瞑想することが発見に導いてくれる
仏陀がほかのどこかにいるのではなく、ここにいるのだと。
仏陀を理解することが仏陀の性質を呼び覚ます。
みんな仏陀、仏陀のあらわれ、すべてがひとつである
仏陀は人の外側に信仰としてあるのではなく
その人自身の基盤である。

 

そして、こうまとめます。
「仏教の主な教えはすべてがひとつであるということである」

 

BBCは山田無文氏にも取材をしています。

山田 無文(やまだ むもん、1900年7月16日 – 1988年12月24日)は日本の臨済宗の僧侶。花園大学学長・臨済宗妙心寺派管長。
わかりやすい法話で親しまれた(wikiより)

禅界では明治以降では稀代の名僧だと言われている(http://www.plinst.jp/musouan/yamada00.html)

山田氏は取材に対して、禅をこう説明しています。

座禅をすると我もなくなり
我とすべてが溶け合う,ひとつになる
花を見れば花は自分になり
月を見れば月は自分になる
すべてが自分になる座禅をすることは幼子になることである
なかなか赤子になれないのが難しいところ
赤子は知識も経験もない、ゼロの存在である。
ゼロとは完全なものでもあり、何でも望むものになりうるものであること

 

今まで禅について漠然としたイメージ程度の知識しかありませんでしたが、こういうことだったんですね・・・

このBBCのドキュメンタリー、世界の宗教とそれを信仰する国を取り上げて全12話で構成されています。
プロテスタントの国としてアメリカで一話、ヒンドゥー教の国としてインドに一話費やすといった感じ。
仏教を担う国としては日本(大乗仏教)とスリランカ(上座部仏教)で各々一話ずつ費やしています。

今では神道のほうが日本の宗教として有名な感がありますが
バブルに至るまでの富を積み重ねていた1977年当時は、日本は仏教の強い国として海外から見られていたということでしょうね。

これは「私が八百万の神を信じない理由」で書きました当時の私の記憶とも一致します。

ちなみにアジアでは他に台湾が道教の国として取り上げられています。
中国本土は登場しません。70年代はまだ共産主義色が強かったせいもあるでしょう。

 

このドキュメンタリーでは禅のみでなく、浄土宗についても大きく時間を割いて取材しています。

浄土宗に関する部分については、後の記事
イギリスBBCが取材した高度成長期の日本の信仰。「日本人らしさ」はここから生まれた?」で触れています。気が向いたら、御覧ください。

 

http://nipponseigenbaku.com/?p=1169

https://en.wikipedia.org/wiki/The_Long_Search

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