トランプ氏はなぜ勝てたのか?イギリスBBCの分析

大統領選からまもなく一週間になりますが、トランプ氏の勝因、今後の予想、そして反対デモなどについて、今でも連日報道が続いています。
・・・でも日本のマスコミ、識者の解説は大体、似たり寄ったりですね。

日本よりさらにアメリカに近しい国、イギリスの国営放送BBCはどのようにトランプ勝利を分析しているでしょう?

BBCがフィラデルフィアの地方都市ヘイズルトン(Hazleton)での取材を中心に、トランプ氏の勝因について述べた記事があります。以下はその抜粋です。(本来の記事はもっと長いです→http://www.bbc.com/news/world-us-canada-37942545)
)。

ヘイズルトンは保守的なペンシルバニア北部の田舎町。この町の共和党票はしばしばフィラデルフィアやピッツバーグといった民主党の強い大都市の票にかき消されてしまう。1992年からずっとこの州は大統領選で民主党の地盤だった。

しかし、今年はこの数十年なかったことが起きた。地方や郊外の票が都市居住者の民主党の票を上回り、ペンシルバニアが共和党候補を支持する州になったのだ。この結果が出るまで、殆どの選挙予測はペンシルバニアをクリントンで固い州とみなしていた。

ヘイズルトンも前回の選挙では民主党支持でオバマが票の52%をとった。しかし今回はトランプが58%をとった。

 

人種問題にうんざりした白人たち

ヘイズルトンを地盤にするバレッタ議員は大統領選の初期からトランプを支持してきた。トランプは彼を最初の安全保障ブリーフィングのアドバイザーにした

バレッタはトランプの支持をやめるよう議員仲間から圧力をかけられたこともあったが、トランプの勝利が確定的になると、いろいろな意味で自分は正しかったのだと感じた。

ヘイズルトンは移民問題に頭を悩ませてきた。もともと9割以上が白人だったこの町は、2000年以降、半数近くがヒスパニックになるまで移民が増えた。仕事のためにニューヨークに来た者たちが、より安い住環境を求めてやってくるのだ。

彼らによって死にかけてた町は息を吹き返したが、大きな抵抗もおきた。
バレッタは市長だったころ、不法移民を泊める家主や、彼らを雇う人物を処罰する法案を通した。そして英語を公用語にした。

The American Civil Liberties Union (全米市民自由連合)はバレッタの制定したその条例についてヘイズルトンを訴えた。法廷闘争の末、街は罰金を払う羽目になった。この判決は人種差別的な街に対する勝利とされ、ヘイズルトンは悪い見本、バレッタは悪者として報道された。

それでもバレッタの人気は衰えず、彼は二期目も当選し、やがて議員になった。

街の犯罪率は上がり続けた。しかし、研究者はそのことと移民が関係があるという証拠は存在しないという。

トランプの選挙活動を応援してきたヘイズルトンの玩具店のオーナーは言う
「あなただって、数年にわたるこの街の変化をみたら腹を立てるはずです。かつてはとても安全で協力的なコミュニティだったのに、もはや安全じゃない」

トランプの支持者は何か月もこれはムーブメントだと言い続けてきたが、マスコミや識者はそれを無視してきた。トランプの選挙運動は史上最悪のものとされ、有志のボランティアは存在しないものとされた。

トランプの選挙活動にボランティアとして尽くした、南アフリカからの移民であるスロット氏は言う。
「自分は1978年に移民して、正しいやり方をしてきた。この国に移民したい人は正しいやり方をすべきだと強く思うよ。(不法移民は)足を踏み入れることさえすべきじゃない。違法は違法だ」

 

変化を求める心

51歳のマーク・オンディシンも妻のブレンダとともにトランプの選挙応援にボランティアで参加し、有権者に何百回も電話をかけた。政治活動に参加したいと思ったことは初めてだという。

「人々は変化を求めてる。人々は国が向かってる方向や、何も達成できないことを好まない。その気持ちがこの街にも滴ってきたってことさ。スモールビジネスが肝心なんだ。私たちは、あまり教育を受けてない人のことも気遣っている」

トランプは白人労働者に生活を取り戻すと約束した。一方、クリントンはごく普通のワシントンDCの政治エリートとして戦った。

 

あまりに強大すぎるヒラリーへの恐怖感

ヘイズルトンから少し離れたところに住む会社経営者ブラッド・モーガンは、クリントンが持つ止める者のない強い政治力への恐れが、彼をトランプへの投票に走らせたと語る。

「トランプのサインもステッカーも持ってない。ただヒラリーを監獄に送るべきってサインならあるよ」

「トランプは共和党の半数に好かれてない。メディアも彼を支持してない。彼は何もできやしないさ」

「―――でもクリントンが大統領になったら、何も彼女を止められるものがない」

識者の一人はいいます。
「アメリカではメディアが投票者に正直でない」

一部のトランプ支持者のメディアへの軽蔑も無理はなく、ヘイズルトンの勝利パーティにテレビ報道は、まるでFOX Newsのようにおどろくべき量の罵りの声を向けた。最も保守的なアメリカのテレビ局さえ、もはや基準と呼べるほど保守的ではない。

アメリカのメディアが報じたトランプ氏の女性蔑視問題、彼の慈善団体への疑惑、税金証明書への疑惑などの問題は単なるニュースというだけでなく、特定の候補への攻撃にみえた。そして、それらが全て本当であったとしても、トランプが有権者に約束したことは、悪い点に目をつむれるほど価値のあるものだった。

上述のオンディシン氏は言う。
「トランプ氏の女性問題の話は、私にとってナイフで切られたような気がするものでした。でもトランプを選ばざるをえない。クリントンのワシントン支配はとても恐ろしい」

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トランプ氏の投票者は静かな存在でも見えないものでもなかった。彼らは生活が苦しくなっていると感じながらオバマ政権の8年をやりくりした白人労働者たちであり、ワシントンDCの秩序を乱したいと思っていた者たちである。彼らはずっとここにいて、トランプ氏のような候補を待ち続けていた。

・・・とBBCの記事は〆ています。

 

確かに圧倒的多数の大手マスメディアが、クリントン氏がFBIとメール問題で裏取引した噂をわきまえたうえで、彼女への支持を表明していたことを考えると、クリントン氏の支持基盤である高学歴層と言われる人たちに対しても厚顔さを感じます。

トランプ氏の勝因の一つは、彼があまりにあからさまな悪役だったことかもしれませんね。もう少し偽善的で小賢しく気取ったタイプだったら、案外クリントン氏が勝利したような気がします。