孔子の正体はモーセ?中国人はノアの子孫?近世ヨーロッパの中国観

かつて中国に惹きつけられ、中国に行ったこともないのに中国に関する書物を発表したヨーロッパの知識人がいます。

その人はアタナシウス・キルヒャー。17世紀のドイツの学者で、ヒエログリフの科学的研究や伝染病研究のパイオニアです。

当時のヨーロッパの学術界において、キルヒャーは最高権威であり、その著作は西洋の上流階級に大きな影響を与えたとされています。

 

ケルヒャーが著した中国に関する本のタイトルは「中国図説(China Illustrated)」

英語版wikiによるとキルヒャーは宣教師として中国に派遣されることを望んだがかなわず、同じイエスズ会員で中国に派遣された宣教師の記録から、この本を書いたそうです。
彼はこの本の中で、中国の歴史にあるキリスト教の要素を強調しています。

日本語のwikiでは、その内容を以下のように説明しています。

中国地図を含む本格的な中国事典であるが、事実と想像の部分がごちゃ混ぜになっている。
たとえばキリスト教と中国の関係を記す中で、古代のネストリウス派が中国に流入していたというのは正しいが、中国人が旧約聖書のハムの子孫であるとか、漢字はヒエログリフが崩れたものであるとか、孔子はモーセ(ヘルメス・トリスメギストス)のことであるというような主張は完全に誤ったものであった。

孔子がモーセって、確かにかなりぶっとんだ説ですね・・・。中国人が「ノアの箱舟」のノアの息子ハムの子孫というのも初耳です。

これらの説に対して、日本語のwikiは上記引用のとおり「完全に誤ったもの」と片付けています。

しかし、英語版では違います。
英語版では、現実とイメージがないまぜになっているとは述べていますが「完全に誤ったもの」などと断定的に否定する表現は使われていません。

掲載されている情報はほとんど同じなので、日本語版wikiの説明は英語版を元にして書かれているものでしょう。

翻訳を日本のwikiに載せた方が「完全に誤ったもの」と思ったから、日本語版にそう付け足したんでしょうね・・・

 

過去記事「中国のユダヤ人。日本人の先祖がユダヤ人ってデタラメじゃない?!」でも触れましたが、旧約聖書を経典とするユダヤ教、ユダヤ民族と中国の関係については日本語に訳されていないものも多いです。日本人は知らないことが多い。

日本人が「完全に誤ったもの」と思ってしまうことを、日本人よりもキリスト教、ユダヤ教圏と中国の関係の歴史に詳しい英語圏の人たちが否定しないって、どういうことでしょう・・・

実際、父ノアとともにノアの箱舟に乗ったとされるハムという人物の子孫が中国人では決してないと、現代人が断定することは難しいですね。

モーセが孔子であるという説はさすがに時代が合いません。モーセは紀元前13世紀ごろ、孔子は紀元前5世紀ごろの人物ですから。

このモーセに関する部分、日本語wikiでは「モーセ(ヘルメス・トリスメギストス)」と表現されています。しかしモーセは古代ユダヤの指導者、ヘルメス・トリスメギストスは錬金術師の祖であり、別の存在です。
実際、英語版では「モーセ”または(/)”ヘルメス・トリスメギストス」が孔子であると表現されています。

賢者の石を手にした存在とされる伝説の錬金術師、ヘルメス・トリスメギストスとはどういった存在なのでしょう?
日本語wikiを参照すると、多くの説が存在します。
そして、その中には3世紀ごろのキリスト教著述家が、ヘルメス・トリスメギストスを、キリスト教の出現を予見した賢明なる異教徒の預言者と考えたというものもあります。
この説を採用すると時代的に孔子であるという主張もおかしくないかもしれません・・・

 

キルヒャーの生きた17世紀より、現在のほうが科学技術が発達し、世界のすみずみについての知識が知れ渡っています。

そのせいか、私たちは現代に生きる人のほうが、過去の人たちより物事をよくわかっていると思い込んでしまいがちです。

しかし聖書にある歴史に関しては、過去の人のほうが、現在より聖書が書かれた時代に近い時代を生きています。その分、口頭での伝承や紛失、破損してしまった過去資料などに触れていた可能性も高かったといえるでしょう

過去記事「日本皇室は中国の呉の王族の末裔なのか 」などに述べましたように、過去の日本人は自分たちを中国からの移民の子孫であると主張してきたという記録があります。そして中国側もそれを認めてきた・・・。

つまりは日本民族とユダヤ文化や聖書とのつながりも、今の日本人より外国人のほうが、よく知ってるのかもしれません。

 

「中国は打ち負かすべき未知の野蛮人としてではなく、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教と同じ父の家に帰るべき放蕩息子としてあるのだ」(p. 69)

“China was presented not as an unknown barbarian to be defeated but as a prodigal son who should return to the home of the common father”.

 

キルヒャーのこの言葉は中国人だけでなく、中国の血と文化を受け継いだ者たち・・・つまり私たち日本人に向けられたものであるともいえるでしょう。

 

https://en.wikipedia.org/wiki/Athanasius_Kircher#Sinology

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