明治期のイギリス大使が日本に向けた不吉な予言

前記事「A級戦犯と呼ばれた男 徳富蘇峰で知るイギリスと日本の溝」で取り上げた書「大日本膨張論」の中に、以下のような文があります。

日本や、日本や、日本の将来は、それただ南米共和国や。それ我が国において十八年間、一種の暴威をふるいたるイギリス使臣パークスの予言なり

大日本膨張論 P30

パークスとは、幕末から明治初期にかけて駐日英国公使をつとめたハリー・パークスのことです。

日本の将来は、ただ南米のようになる・・・明治初期にイギリス人にそんなことを言われてたんですね。

それに対して、徳富氏は以下のように反論しています。

何をもって、我が日本国をば、放逸、慢惰、堕落の標本たるスペイン人の子孫の、さらに放逸、慢惰、堕落におもむきたる南米共和国に比する。吾人その理由を解するあたわずといえども、彼が我が国に対して十二分の軽蔑と、不信用と、かつ不安心とを表明するの言葉としては、全くこれを了知するをえるなり

同上より引用

放逸、慢惰、堕落の標本たるスペイン人より、さらに放逸、慢惰、堕落している南米共和国・・・徳富氏からみた、明治期のラテンアメリカへの評価です。

今から100年以上前に、こんな調子だったと言われてしまうラテンアメリカ・・・現在も決して繁栄してる地域とは言えませんね。第三世界と言われてしまうことすらあります。

2011年からずっとこの国に注視していたが、経済は一向に上向かず、国としてのビジョンもない。これほど豊富な資源国なのに、人々は文句ばかりを言い、特に努力をして生活を向上しようという意欲も見られない。

http://keepmyword.hatenablog.com/entry/2017/08/24/060634

・・・この引用で述べられているのは、どこの国のことだと思いますか?

”豊富な資源国”という部分を除くと「日本のことじゃないか?」と思ってしまった方も、いるのではないでしょうか?

・・・これは、アルゼンチンに頻繁に入国してきた日本人によるブログの一部です。

かつてアルゼンチンはラテンアメリカで唯一の先進国と言われ、首都ブエノスアイレスは南米のパリとたとえられていました。「大日本膨張論」が書かれた時代には、一人あたりのGDPも日本より高かったぐらいです。

それが20世紀の時代の間に凄い勢いで失墜しました。今はもう、アルゼンチンを先進国と呼ぶ人はほとんどいません。

アルゼンチンに対しては「先進国から脱落した国」ということで、日本の未来だと怯える声がありますね。

国内だけでなく、検索するとNewsWeek誌のアメリカ国内向けサイトも、2002年の時点で「Japan As Argentina」という記事を出しています。

私個人も「メキシコ人から見た日本人。これってアメリカ依存の国の特徴?」 でメキシコ人と日本人の類似性にふれたりしてきたので、冒頭のパークスの予言を知ったときは、ぞっとしました。

 

明治維新のイギリス大使パークスとは?

さて、このパークスとは、どのような人物なのでしょう?

日本のwikiによると、パークスの正式な名はサー・ハリー・スミス・パークス。まだ孝明天皇の時代だった幕末から、明治初期にかけ18年間、駐日英国公使を務めたとあります。

駐日英国公使とは今でいうイギリス大使のことです。パークスはイギリス政府により全権をまかされる立場でした。

在職期間18年は、歴代の駐日英国公使・大使の中では最長だそうです。

そして癇癪もちであったが、外交官としては優秀だったとあります。

実際、wikiのパークスの頁をみると、将軍慶喜に会い、明治天皇に会い、多数の重要な会議に参加したりと、幕末~維新期において重要な役割を果たしていたことがわかります。

ちなみにこのパークス、坂本龍馬暗殺にもかかわったとされています。龍馬が日本にキリスト教が広まることに対して否定的だったことが原因だとか。(→書籍「日本の本当の黒幕 上巻 龍馬暗殺と明治維新の闇」)

・・・興味深いのが、パークスが和紙をコレクションしていたという件です。

1869年に『日本紙調査報告』を作成、本国に報告している。パークスおよび公使館員が調査したもので、412種類の和紙が収集された。(略)このパークスの報告書は、生産地、価格、製造方法や用途などが詳細に記載されている点で貴重である。このコレクションは1994年に「海を渡った江戸の和紙」展で里帰りした

wikiより

過去記事「あの「水中花」を滅ぼすのは日本人?」において、戦後まもない頃はあった水中花の材料 通草紙の製法が、現在では失われてしまったことにふれました。戦後世代への技術継承を行わなかったことが原因ではないかと・・・

通草紙だけでなく、日本の和紙は現在、危機的状況にあるといいます。

国際的な高い評価とは裏腹に、和紙は今、絶滅の危機にひんしている。全国手すき和紙連合会によれば、日本で和紙をすいている家はわずか301戸。20世紀の初め、1901年には6万8562戸だったので、100年あまりで230分の1に減った計算になる。そして今なお、減少のペースは加速を続けている。

日経テクノロジー

パークスの行動は、まるで日本の和紙がいずれ消えてしまうと、わかっていたかのようです。

・・・なんだか本当に予言者みたいですね。

 

イギリス人はとても賢い。でも神ではない

徳富蘇峰氏は白人の中でもイギリス人をとても評価していました。

私自身も、白人のうちで一番賢いのはイギリス人ではないかと思っています。

こういうと、ドイツ人やスイス人など、優れた工業技術を持っている民のほうが優秀だと反論する人もいるかもしれません。

確かに素材など、命のないものを操ることに関してはゲルマン系は優れています。

しかし人間との駆け引きや将来への投資など、不確定要素の多い領域での対応力に関しては、イギリス人が非常にすぐれていると思います。

・・・イギリスを現在は凋落した国だと考える日本人も少なくありませんね。

確かに表面的に見る経済指標は、アメリカのような超大国にはとても及びません。

しかし彼らはその裏で、英領マン島などのタックス・ヘイブンを通じて世界中から富をあつめています。イギリス上流が実際、どのぐらいの富を動かせるのか、外からではわかりません。

・・・また前記事で取り上げた徳富氏の著作の言葉のように、大英帝国時代の版図の広さを過去のイギリスの強さの象徴と考える人は多いですね。

しかし当のイギリスにとってみれば、風土の違う遠い地に軍や監督者を派遣するのは、負担の大きいものでした。

インド総督など、就任したが最後、生きて故郷に戻れない役職といわれていたといいます。バーネットの「秘密の花園」の主人公が孤児になったのも、両親がインドで死んだからでしたね。

世界の富豪や元植民地の優秀な学生が自らイギリスをめざす今の状態のほうが、イギリスにとっては楽かもしれません。

 

またイギリスに代わって世界一の国となったアメリカでも、社会的地位の高い層を中心にイギリスを慕う人が多いです。
(関連記事「「アメリカをイギリスの植民地に戻して」アメリカ人の嘆願にエリザベス女王は・・・」)

アメリカが軍事行動を起こすときも、大体はイギリスと一緒ですね。

「アメリカはイギリスに操られてると感じる」というアメリカ人のredditへの書き込みを見たことすらあります。

 

―――高い智慧を持つイギリス人。しかし、そんな彼らも神ではありません。見込み違いもあります。

たとえば中国大陸。彼らは混乱の最終的な勝者が毛沢東になるとは思ってなかったんじゃないでしょうか。イギリスが支援した蒋介石は台湾に追いやられてしまいましたね。

またソ連崩壊後、プーチンのようなリーダーが登場するとも予想してなかったでしょう。

 

暗い未来を予言された日本の使命は?

過去記事「豊かな北アメリカと貧しい南アメリカ。何が明暗を分けた?」で述べたような歴史を経て、現在にいたるラテンアメリカ・・・。白人との混血具合が社会的地位を左右したので、原住民の多くがメスティーソを名乗りたがり、西洋的なライフスタイルを取り入れたがったのでしたね。

そして百年以上前から、徳富氏のようなアジア人にさえ、放逸、慢惰、堕落と表現された地域です。唯一の先進国だったアルゼンチンも沈んでしまった・・・。

アルゼンチンの民の遺伝子の95%は白人由来だそうです
・・・彼らはこうした証明には熱心です。

ラテンアメリカには自分自身を白人と認識するものが多い国々がある。ラテンアメリカの団体Cohesión Socialが各々違う国から一万人を選んで行った調査によると、34%が自らを白人だと名乗ったという

英語版wiki 「White Latin Americans」より

そういうわけで、今も昔も、西洋文明を信奉している国が多いです。
以下の地図のように、ほとんどの国が民主主義を採用しています。
(2000年時点の調査結果。黄色の国々が民主主義国です。http://www.excellup.com/classnine/sstnine/democracy.aspxより)

 

・・・欧米先進国の民の多くは、ラテンアメリカの状態を失敗とみなしています。

しかし、彼らだって同じ血をひくラテンアメリカの民の苦難を喜んでいるわけではありません。スラム街や、アメリカ国境付近で地べたで寝たりしている移民希望者の悲惨さはよく報道されています。
(関連記事「世界で最もアメリカ依存の国」)

・・・ただ、欧米人も本当にどうしたらいいかわからない。いろいろ研究しているものの、百年以上も、どうしたらいいかわからないのです。

英語版wikiの「アメリカのバックヤード(America’s_backyard)」」というページに項目まであるラテンアメリカ。・・・その終わりない荒廃は、西洋文明の負の部分であり、解けない謎であり、悲しみなのです。




世界のIQランキング。日本人が知らない民族の序列」で触れたように、中国大陸と周辺の黄色人はすべての人種の中でも、高い知能に恵まれています。

そして、その中でも、白人崇拝、西欧至上主義の価値観に最も深入りしてきたのが、私たち日本人です。それだけ、どんなものかわかってる。

そしてありがたいことに、西洋と違う自分たちの伝統的な文化や価値観のことも、知ろうと思えば知ることができます。

 

もし、これからの日本人がパークスの予言を外れさせる方法を思いつけたら・・・
それは、もしかしたらラテンアメリカの将来にも光明を与える、もしくはそのヒントになる方法を提示することになるかもしれません。

もし、そんなことができたら・・・日本はノーベル平和賞を軽く超える貢献を、世界にすることになるんじゃないかと思います。

 

 

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