なぜ中国人の移民は成功しやすい?かつて日本人も持っていて失ったもの

前記事「アメリカに住む日系人 他アジア系と違う点は?」で触れましたように、1910年から1960年頃まで、アメリカでもっとも多いアジア系は日系でした。

しかし、その後は他アジアが増えていき、今は中国系が一番多くなっています。

 

現在、アメリカに住む中国系の割合はアメリカの人口全体の1%になるそうです。アメリカ人百人中、一人が中国系なんですね。

アジア系で唯一、減り続けているという日系とは対照的ですね。

 

中国人のアメリカ進出は清朝から

アメリカに最初に移民したアジア人は中国人でした。19世紀なかば、カリフォルニアで起きたゴールドラッシュの頃に押し寄せたのです。

清朝時代に来た彼らは辮髪で、アヘンをよく用いていました。箸を使ったりと生活習慣も独特で、一般的なアメリカ人から見れば特異な存在でした。

やがて白人たちは中国人コミュニティを犯罪や売春の温床とみなすようになり、排斥運動が起こります。

 

その後、1882年になり、中国人排斥法が施行されました。

 

それまで中国移民たちは白人に雇われることで収入を得ていましたが、それがなくなりました。
ちなみに、その後、中国人の代わりの労働力を求める白人の需要から、日本人の労働者が大量にアメリカに渡ることになりました。
(関連記事:「移民してもアメリカ国籍がもらえなかった日本人 戦前の在米日本人たち

 
さて、職を失った中国人たちは中華料理店やクリーニング店を開いたりと、自分で仕事を始めました。

また競争を避けるため、アメリカの各地に散らばり始めます。

誰がどの地域に行くかは、中国移民の互助組織、つまり中国系コミュニティが決めていました。散らばった者たちから、その州の情報を集め、より中国系の少ない地域、つまり競争の少ない地域に次々と人々を移住させていったのです。

こうした中国系コミュニティは出身地が同じだったり、姓が同じ者同士が集まって構成されました。中には130年以上続いて、現在に至るコミュニティもあるといいます。

 

アメリカの中国系とユダヤ系の意外な縁

コミュニティの統率のもと、各地に散らばった中国人たち。その多くが中華料理店を開きました。

そのことが彼らと、アメリカに住む、もう一つの民を結びつけます。

ユダヤ教徒はキリスト教と同じ神を信仰しながら、イエス・キリストを否定する人たちです。
(関連記事;「イエス・キリストの実父とは?!ユダヤ教のイエス観 」)

アメリカに暮らすユダヤ系ファミリーにとって、多くの外食店は行きづらい場所でした。イタリアン・レストランはじめ、多くの店が店の装飾に十字架や聖母マリアを使っているからです。
 
その点、中華料理店は世俗的な装飾しかなく、ユダヤ系にとって安心して行ける店でした。

特にイエスの誕生日であるクリスマスには、中華料理店の客の九割がユダヤ系で占められたといいます。

 

キリスト教徒に囲まれて暮らすユダヤ系にとって、クリスマスに安心して行ける場所といったら、中華料理店か映画館しかありませんでした。

そしてアメリカに住む中国系にとっても、ユダヤ教徒はお得意様になります。

 

アメリカのユダヤ系の中には中国系、中国文化に親しみを見せる人がよく見られます。
facebookの創始者ザッカーバーク氏が中国系の女性を妻にし、中国文化にも好意的だったり、トランプ氏の孫娘でユダヤ系の父を持つアナベラちゃんが中国語を学んでることは、日本でもたまに話題になりますね。
その背景には、こうした奇妙な共生関係の歴史があるのかもしれません。

 

中国人コミュニティの長所と短所

第二次世界大戦でアメリカと中国が同盟関係になったことを受けて、1943年に中国人排斥法は廃止されます。

その後、1980年代まで、アメリカに渡る中国人には、台湾や香港の関係者など、民主主義や自由を理由にした政治的な移民が多く見られました。
ただ、こうした人々は従来のチャイナタウンや中国系コミュニティと交わるより、郊外に独立して住むケースが多かったといいます。

 

しかし90年代になると、仕事を求めてアメリカに来る本土出身の人たちが移民の主流になります。彼らは都市部に集まりました。そして、中国系コミュニティに変化を与えていきます。

チャイナタウンでは従来の祝日とあわせて中華人民共和国の祝日を祝うところも出てきました。また中華系向けの学校でも従来の繁体字ではなく、簡体字を教えるようになっていきました。

 

数年まえ、アメリカに移住して間もない中国人が、自分の移住の顛末を書いた記録を読んだことがあります。

それによると、英語がほとんどできなくても、こうしたコミュニティの関係者と縁があれば、簡単にアメリカに移住し、仕事を紹介してもらうことができるそうです。

中国系コミュニティを頼ることさえできれば、なんとかなってしまうみたいですね。中国人の移民が増えるはずです。

 

頼り甲斐のある中国系コミュニティ。中国人はアメリカにかぎらず、自国含む各地でこうしたネットワークをよく築きます。

 

日本にも多数の中国籍の人が暮らしています。外国籍の中で最も多いといっていいでしょう。
しかし総務省の調査によると、その中で生活保護を受ける人の割合は1.6%。同じく日本に多い朝鮮・韓国籍やフィリピン籍と較べて、1/10以下の少なさであるとされています。日本が母国である日本人の2.6%より少ないぐらいです。

中国籍に困窮者が少ないのは、彼らのネットワークの互助力によるのかもしれません。

 

・・・でも、いいことばかりでもないといいます。

中国人の中にも、内向的な人、人付き合いがあまり好きでない人もいます。そういう人たちにとっては、こうした「交流なしでは生きられない社会」が苦痛に感じられることもあるようです。

また職場や友人との食事会、過去お世話になった人へのお礼(お歳暮、お中元に相当するもの)、プレゼントやそのお返し、お土産など、交際費が非常にかかり、貯金がほとんどできないという愚痴がでることもあります。

 

今の日本の若い世代は、こうした中国人コミュニティの実態を、窮屈そうだと思う人が多いかもしれません。

でも、昭和の時代を知る世代なら、日本もかつてはそうだったと思い出す人もいるかもしれません・・・

 

バブル期の渡航ブームで欧米に出た人が、現地にある日系人コミュニティに向けた批判の中に、ムラ社会という言葉があります。中国人コミュニティはまさにそんな感じかもしれません。
(関連記事:「バブル期に日本は何をしくじった?~孤独なコスモポリタン」)

 

―――中国人/中国系は昔ながらの団結やコミュニティを維持し、各地で互いに協力し合うことで、それなりの豊かさや保証を得ている。
そのかわりプライバシーの保護や個人の自由が少なく、窮屈である。

 

かつて同じようだった日本人や日系人は、バブル期以降、変化し、自由を手に入れた。そのかわりバラバラになり、コミュニティも衰退し、経済的にも苦しい人が増えてきている・・・
(関連記事「アメリカに住む日系人 他アジア系と違う点は?」)
 

・・・いいとこ取りはできないのだなあ、と2つの歴史を並べてみて、思います。

 

https://www.youtube.com/watch?v=QgYPJT0mRaw
https://en.wikipedia.org/wiki/History_of_Chinese_Americans
http://www.la.us.emb-japan.go.jp/web/m07_06.htm
http://www.smithsonianmag.com/arts-culture/why-did-jewish-communities-take-to-chinese-food-11199092/

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