これが今時の日本の道徳の教科書!昭和世代なら愕然の中身とは?

先日、現代ビジネスの記事「「日本のどこがダメなのか?」に対する中国ネット民の驚きの回答」内の翻訳が、ネットを騒がせました。

私は日本人が悪であると言いたいわけではない。彼らは極めて誠実で善良だ。ただ、彼らの骨身になんら明確な正義の概念がないだけである。彼らはなにが正しくてなにが間違っているといったことを明言することができないのだ

・・・この指摘に頷く日本ネット民、少なくありませんでしたね。

私も、ちょうどこのテーマについて書いてみようと資料を集めていたところだったので、興味深く読みました。

―――なにが正しくて何が間違ってるか明言できない。

これは日本人の多くが心の隅に抱えてる不安ではないかと思います。
(日本人は善悪を子供に教えられない?→「日本人が幼稚と言われるのはなぜ?(中)」)

「人に迷惑をかけてはいけない」
「ものを丁寧に扱おう」
「礼儀、マナーを守ろう」

日本は、こういった小手先の良識にあふれています。

しかし、

過剰なクレームをつけてくる客を店員がひたすら我慢することは是か否かとか、

熊本の赤ちゃんポストの設置は是か否かとか

ちょっとマニュアルにない判断を求められる問題になってくると・・・

たとえ心の中に思うことはあっても、責任を問われることを怖がり、信念の通りに動こうとする個人は少ないですね。

責任を問われることを恐れなくてはいけないのは、個人によって善悪の基準が違う=社会で共有される徳の定義がないからです。個人の考えは自由――――だから、自分が正しければ、自分に文句をつけてくる相手も同じぐらい正しい・・・それでは、現状維持以上のことはできません。

 

そんな日本では、今、どのような道徳教育が行われているのでしょう?

今回は、文部科学省が出している道徳の教科書を紹介したいと思います。

お固い教育を受けている昭和世代には、ちょっとショッキングかもしれません・・・。

 

今時の中学の道徳の教科書

中学校で2年前まで使われていた教科書です。
現在も採用されているのかは、わかりません

奥付に文部科学省とあります。

 

・目次はこんな感じです

 

 

・sayingページ

sayingページというコーナーがところどころにあり、日本と西洋の著名人を中心に彼らの一言を紹介しています。

日本人に割り振られてる量は西洋人より少し多いぐらいで、拮抗しています。

上図のほかに紹介されている西洋人は
アリストテレス、ホラティウス、フランクリン、スピノザ、
ユーゴー、アインシュタイン、サン・テグジュペリ、チャップリン、ヴォルテール、
ゲーテ、キルケゴール、フィヒテ、シュヴァイツアー、ケネディ、ハイデッガー、パスカル、ルソー、エマーソンなど

どういうわけか、ワーズワースの詩に1ページ費やしています。

日本人は白洲次郎、井上ひさし、世阿弥、河合隼雄、小津安二郎など。各所、歴史上の文化人が多いです。

他地域からはアジアの孔子と老子、魯迅のみ紹介されています。

この本の中で20ページ弱が、この内容に使われています。

 

・message/columun(人物探訪)ページ

messageまたはcolumnのページでは著名人、偉人個人について1ページ使って少し詳しく掘り下げています。

松井秀喜、山中教授、上杉鷹山、松下幸之助、新渡戸稲造、新島八重、本田宗一郎、若田光一、大木聖子(慶應義塾准教授)、アンネ・フランク、渋沢栄一、ガンディーといった人物が登場します。

スポーツ選手、宇宙飛行士、経済人、科学者などから著名人を選んだといった感じです。

数少ない外国人になぜアンネとガンディーが選ばれたのか、ちょっと興味深いですね。

この内容に20ページほど使われています。

 

・全体的な傾向

・・・私が使った昭和の道徳の教科書とくらべると、イラストや写真、引用文が、とても多いです。

あとアンケート結果のグラフや表を漫然と載せているページが多いです。それをどう捉えるかについては読み手に丸投げの姿勢がめだちます。

かつての道徳本に多かった訓話は6話収録と、少なめな印象です。

昭和の頃までは日本の道徳というと孔子・論語のイメージでしたが、
この本には、東洋哲学に関した人物はほとんど登場しません。
「キミばあちゃんの椿」という訓話で儒学者 広瀬淡窓と万善簿の紹介、あとはsayingのコーナーで孔子、老子、貝原益軒、あと仏教学者の言葉が1,2行紹介されているぐらいです。

 

・正義とは?
この本で唯一、「正義」がタイトルに含まれている「正義を重んじ公正・公平な社会を」の章は、以下のようになっています。

 

平等を訴える世界人権宣言を引用

そしてまたグラフ

 

ガンジーのcolumnコーナーに次いで、以下のいじめ撲滅宣言でこの章は終わりです

 

章全体の概要として以下の十か条が書かれています

 

うーん・・・いじめが正義に反してるとは述べてますが、正義とは何なのかについては触れられてないようですね。



どうでしょう?

この内容に対して、体系的なものが感じられないと思われた方もいるのではないでしょうか?

編集側がなんとなく良いと思った言葉、エピソードを、世界中から集めて、切り貼りしただけって印象ですね。

 

昔と今の道徳、どこが同じ?何が違う?

戦前に使われていた小学生向けの修身(道徳)教科書もまた、日本と西洋の偉人や著名人を多く取り上げていました。
豊臣秀吉の若い時代の話とか、ワシントンが桜の木を切った話とかが、収録されていたようです。

上で紹介した中学校の道徳の教科書のsaying/messageコーナーは、敗戦前の修身教科書のその点を参考にしているのかもしれません。
しかし訓話のほうは、偉人伝の訓話が主だった修身教科書と違って、殆どが偉人と関係ない、現代の作家によるオリジナル小説のようです。ネット上の言葉に激昂して相手を罵る言葉を打ち込んでしまった主人公が、後になってネットの向こうにも同じ人間がいると理解して反省する・・・といった類の物話がおさめられています。

 

道徳の教科書で同じく日本と西洋の偉人を扱っても、昔と今の教育には大きな違いがあります。
かつては中学以上に進むと、当時の日本の知識層にとって必修科目だった漢学を学ぶことになっていたのです。

私が中高生だった80年代ぐらいまで、世間で道徳というと孔子、孟子のイメージが強かったのは、敗戦直後まで行われていた漢学教育の影響だったのかもしれません。

 

今の日本では、漢学が敗戦前の日本の教育において、どれぐらい大きな存在だったのか、ほとんど話題になりませんね。
小学校向けだった教育勅語はうるさいぐらいに出てきますが・・・

 

次記事「明治~戦前の偉人たちを生んだ漢学 これが本来の日本の道徳」では明治~敗戦前の社会で重要な役割をになっていたにもかかわらず、現代日本人に殆ど知られてない学問、漢学についてとりあげてみます。

 

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