なぜアメリカ人は進化論を信じない? 日本人が知らないその背景

ダーウィンの進化論を受け入れないアメリカ人が多いことは、日本でも時々話題になりますね。

多くの日本人にとって、「エッいまだに?」と驚いてしまうことが米国で続いている。米市民の10人中4人が、人間が神によって創造されたといまだに信じているのだ。(中略)

(アメリカの)キリスト教社会は、進化論を否定してきた。教育レベルが高い人は進化論を信じているとは限らない。

日経ビジネス

テレビ番組でもアメリカの実態として、こうした進化論を否定するアメリカ人たちが驚きをもって紹介されることがあります。
・・・そして、そうした場面でテレビ画面に映るアメリカ人は、ほぼ白人です。

日本において、進化論を知っていることは、ある意味、知性の証明ですね。
人類はサルが進化したものではなく、神が作ったものなどと人前で言ったら、イタい人と思われてしまうでしょう。

なのに日本より優れた科学力を持つ先進国アメリカの民が進化論を否定し、キリスト教の聖書の言葉を盲信している。
この点に矛盾を感じてしまう日本人は多いかもしれません。

でも、これには日本ではあまり知られていない、アメリカなりの理由があるのです。

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ナチスとダーウィンの理論が結びつけて考えられることは日本ではあまりありません。
しかし、実は西側諸国においては常識に近いことです。

加えて、劣ったものを淘汰しようという優生学も、ニーチェの超人思想も、もともとはダーウィンの進化論から発展したものだといわれています。

ダーウィンの自然淘汰説を適用して社会現象を説明しようとする立場をソーシャル・ダーウィニズム(Social Darwinism)とよびます。

ただ、この言葉、日本では一般的に社会進化論と翻訳されていて、あまりダーウィンを連想させるものではありません。

日本のwikiで社会進化論のページを見るとコントやスペンサーが祖とされています。しかし、欧米ではダーウィンの理論を発展させたフランシス・ゴルトンが祖であるとみる向きもあります。

たしかにダーウィンより前時代の人物であるコントやスペンサーが、ダーウィンの名を冠した社会進化論(ソーシャル・ダーウィニズム)の祖というのは、ちょっとおかしいですね。

 

さて、この社会進化論の祖とよばれるフランシス・ゴルトン氏、ダーウィンの従弟でもあります。

彼はダーウィンの理論を元にいろいろな理論を発展させ発表していました。上に述べた優生学の祖も彼であるとされています。

ちなみに人間には聞き取れないような超音波を発生させる笛、いわゆる犬笛の発明者でもあります。

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ダーウィンの従弟 フランシス・ゴルトン

ゴルトンはイギリスの上流階級を調査し、彼らの高い地位は彼らの優れた遺伝子によるものだと結論づけました。

やがて彼の説を支持する人々の間から、人類の進化は優秀な人間同士が選択的に結びつき、子孫を残すことによって成し遂げられると考える向きがでてきました。

 

また、進化論に影響を受けていたニーチェは人類の進化が最終的に「超人」を作り出すと考えていました。超人とは今の人類からより進化したものであり、つまりは今の人類よりさらにサルから遠い存在であるということです。

こうして生じた超人は自分より弱いもの、無能なものを自らの意思に従わせることができるというのがニーチェの主張でした。

 

ダーウィンやゴルトンの著作、そしてそれにヒントを得たニーチェの無神論は19世紀後半~20世紀はじめのドイツ国中を席捲していたといわれています。

ニーチェに影響を受けたアドラーもその時代の人物ですね。
(参考記事:「ちょっと不安なアドラー心理学。その背景」)

ドイツ人たちは社会進化論を真理として受け入れ信奉していたのです。

 

そこに現れたのがヒトラーとその側近たちです。
猿に近い黒人への教育は無駄と主張するなど、ヒトラーはダーウィン理論をもとに人種差別を正当化しました。

そして進化を夢見るドイツ人たちから大きな支持を得ることに成功しました。

カリフォルニア州立大学のリチャード・ウエイカート教授(Richard Weikart)は
ヒトラーは進化による進歩を基本的にいいことだと思っており、優秀であることが進化の過程と結びついていると考えていたとしています。
そしてダーウィン理論に基づけば、生存競争の上で増えた最も優秀な人々が、他のものと入れ替わることが進化だと考えていたのだろうとしています。

 

社会進化論、優生論を積極的に受け入れていた国はドイツだけではありませんでした。
さまざまな人種の共存による葛藤を抱えた国、アメリカでも歓迎されていたのです。

ジョージ・ウィリアム・ハンター(George William Hunter)という学者による 「市民の生物学」Civic Biologyという本があります。
1920年代、テネシー州などで高校の教科書として採用されていた本です。

この本は人類には黒人、(東南アジアの)マレー系人種、日本人や中国人などの黄色人といった種類があり、その中で最も優れているのが白人だと教えています。

また結核や梅毒、精神薄弱のいる家系は、病気や不道徳、犯罪を拡散する存在と定義しています。
彼らは社会から受け取るだけで与えることがない寄生生物のようなものだそうです。

そして、こうした動物以下の人々への対処法は、彼らの遺伝子がこれ以上広まらないよう、殺すことだとしています。しかし、現実的にはヒューマニズムがそれを許さないので、性交渉を避けるなど様々な方法で血統が続くことを防ぐべきとしています。

・・・なんとも凄い内容ですね。

この本だけでなく、1920年代はアメリカの多くの大学で入学時のカリキュラムに優生学が含まれていました。

 

また優生学に肯定的だったとされる20世紀初頭の大統領、セオドア・ルーズベルトも以下のような手紙を残しています

どんな農夫でも良い苗を育てず、悪い苗が増えるままにしておくとしたら、その農夫は頭がおかしいと言われるでしょう。(中略)
いつか我々は理解するでしょう。優良でまともな国民の逃げられない義務は世界中から劣った人々の血を取り除くことだと。我々は悪いタイプの人々が社会に残り続けることを許すつもりはない

・・・現在、差別的と非難されがちな大統領トランプ氏もさすがに、ここまで弱者に冷酷ではありませんね。。。

ちなみに日本のwikiによると、セオドア・ルーズベルトは歴代アメリカ合衆国大統領のランキングで現在でも偉大な大統領の一人として格付けされているそうです。

 

またアメリカの優生学者の作った社会的弱者への避妊去勢法を参考にして、ナチスの法律が作られたという経緯もありました。

当時のアメリカの優生学の支持者たちは、ナチスとの価値観の一致を歓迎していました。

 

しかし、ナチスの敗北を境に、こうしたダーウィンの理論を礎にした優生論、社会進化論は下火になっていきます。

代わりにキリスト教の人気が高まったのは、現在、キリスト教民主同盟という政権与党を持つドイツと同じ流れかもしれません。

以上のような歴史を歩んだ末、アメリカで白人が進化論を信じないと主張することは、どのようなことを意味するでしょう?

それは、本人が熱心なキリスト教信者であるということのみならず

・アンチナチスである、
・優生論に基づいた人種差別主義者ではない、
・社会的弱者に冷酷でもない
・つまりは、人畜無害な正統派アメリカ白人である

という、暗黙のメッセージを発してることになるのでしょう。

・・・・・

日本人が一番よく知っている外国はアメリカだと考える日本人は多いと思います。
でも、実際にはアメリカについて私たちが知らないことは、とても多いです。

 

http://creation.com/hitlers-master-race-children-haunted-by-their-past
https://quizlet.com/60938587/eugenics-flash-cards/
https://en.wikipedia.org/wiki/Eugenics_in_the_United_States
http://eugenics.us/george-william-hunters-civic-biology-the-eugenics-textbook-at-the-heart-of-the-scopes-monkey-trial/205.htm

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