アメリカで人口を増やし続ける白人集団 アーミッシュとは?

日本の少子化が話題になるとき「欧米でも白人は少子化が進み人口が減少している。増えているのは移民の子供だ」という意見をよく目にします。

しかしアメリカ国内で、急激な勢いで人口を増やし続けている白人グループがあるのをご存知でしょうか?

それが「アーミッシュ」(amish)――――先進国アメリカに住みながら、電化製品などの近代文明を拒絶した生活をしている集団です。

アーミッシュとはなにか?

欧米のキリスト教文化では、子供が生まれると洗礼を行います。イギリス王室のウィリアム王子の子供が生まれた際も、洗礼式のニュースが報道されました。そのぐらい一般的な儀式です。

こうした幼児洗礼だけでなく、成長した本人が信仰を知り、改めて洗礼を受けてこそ教会の一員になれるとしているのがキリスト教「再洗礼派」です。

この再洗礼派のうち、スイス人ヤコブ・アマンを指導者とする一派をアーミッシュといいます。教会の純粋さを保つため一般社会から距離をおこうとする保守的な宗派です。

1700年代はじめ、アーミッシュたちはヨーロッパから、信教の自由の国アメリカに移住し始めました。そして社会と隔絶し、自分たちだけの教会とコミュニティを守る暮らしを続けます。

現在、アーミッシュはペンシルバニア、オハイオ、インディアナ州、カナダではオンタリオ州に多く住んでいます。

一方、ヨーロッパのアーミッシュは他宗派に吸収され、現在はほぼなくなっています。

 

アーミッシュの特徴とは?

特徴1:近代文明を拒絶している

アーミッシュは電話やラジオ、電化製品といった近代技術による機械類を拒絶した暮らしをしています。
移動も車は使わず、馬車を使います。
文明的な生活を嫌うアーミッシュは、都市部から離れた農地を探し、居住地を広めてきました。

 

特徴2:自分たちのコミュニティ内だけで暮らしている

一般的に、アーミッシュのコミュニティ集団は教会と、そこが管轄する数十の世帯で成り立っています。

こうしたコミュニティがいくつもあり、それぞれごとに違ったルールがあります。

たとえば服装など、黒と白の決まった服しか認めない集団もあれば、地味な色ならば他の色も認めるところもあります。

そして、こうしたルールを守っているかどうかを、コミュニティのメンバー同士でチェックしています。

コミュニティのメンバーは基本的に、外部の人たちと交流しません。
コミュニティはアーミッシュの生活の中心あり、出産、育児、近所づきあいが彼らにとって最大の関心事です。そして生きる上で起こるすべてのできごとを神の言葉に解釈します。

 

特徴3:無抵抗主義である

アーミッシュは無抵抗主義を主張し、軍事活動に参加しません。社会保障にも一般的には参加していません。

 

 

どのぐらい人口が増えている?

アーミッシュの人口は1920年代には5000人程度でした。それが1980年代なかばには8万4000人に増加します。
その後、30年あまりの間に急激に増え、現在は33万人を超えるとされています。

英語版wikiによると、1992年から2017年までの期間に、アーミッシュの人口は149%増加したそうです。同じ期間のアメリカ全体の人口増加は23%ですから、驚異的な増え方です。

「大家族であることを神の祝福とみなす彼らの信仰」と「医学の発達による妊婦や幼児の死亡率の減少」の二点が増加の主な理由と考えられています。

なぜ電化製品や近代文明を拒絶する?

アーミッシュの信仰では、懸命に働くことは神々しいことであるとされています。そして、電化製品などの使用はその仕事をへらすことになるため、よくないことだとされています。
近代技術により仕事を早く終わらせた結果、時間を持て余す若者が増えるのは、避けるべきだという考えです。

伝統的に農業を行ってきたアーミッシュですが、ここ数十年で企業が増え、現在では農業従事者は少数派となっています。
彼らによる木工の商品は「アーミッシュ家具」として人気を集めています。

 


米amazonで販売されているアーミッシュによる木棚

 

どこからきた白人なのか?

アーミッシュの大多数はスイスおよびドイツから移住してきた白人の子孫です。
そのため、ペンシルバニア・ダッチと呼ばれるドイツ語の方言を使い続けています。

彼らは自分たちのコミュニティ以外のアメリカ人たちを「イギリス人(English)」と呼んでいます。アメリカの一般的な言語が英語であることと、アーミッシュたちが移住しだした18世紀はじめのアメリカが、まだイギリスの植民地だった名残でしょう。

 

アーミッシュも普通の学校に通う?

1950年ごろまではアーミッシュの子供も他のアメリカ人たちと同じ学校に通っていました。
しかし、その後、アーミッシュたちは自分たちのための学校をコミュニティ内に持つようになりました。
授業はドイツ語(ペンシルバニア・ダッチ)と英語で行われます。

アーミッシュの間では一般的に、高い教育はコミュニティの解体、分離につながることとして奨励されていません。

アメリカにおいて、義務教育は高校までです。しかしアーミッシュの子供に対しては義務教育を中学までで終わらせてよいと、法律で認められています。

このあたりが、信教の自由の国アメリカですね。

 

「ラムスプリンガ」とは?

アーミッシュの子供は青年になると、アーミッシュをやめるか、再洗礼してアーミッシュのコミュニティで一生を過ごすかを自分で決めるための「ラムスプリンガ」という機会が与えられることがあります。

この期間、青年はコミュニティを出て俗世に暮らすことを許されます。そして、外部の人たち(彼らのいう「イギリス人/English」)の世界を知ることができるのです。
華やかな服を着たり、タバコやドラッグを使用するといったことも許されます。

この期間の子どもたちを取材する「ブレイキング・アーミッシュ」というアメリカのドキュメンタリーシリーズもあります。映画も作られたりしています。

日本でも、ラムスプリンガを自分で生きる道を選択できる素晴らしい期間と解釈する声をよく見ます。

ラムスプリンガの期間を終えた後の青年たちの、およそ9割はアーミッシュとして再洗礼する道を選ぶそうです。

アーミッシュの慣習として有名なラムスプリンガですが、必ずしも教会から離れて俗世で人生を考える人ばかりではありません。結婚相手探しのイベントという面もあるといいます。
また小規模なコミュニティだと、その自由度もより低いものになる傾向です。

アーミッシュ内部には大小含む数多くの集団があり、それぞれ独立したルールをもっています。ラムスプリンガの内容もそのコミュニティの傾向に左右されています。

一般人でもアーミッシュになれる?

アーミッシュは改宗者を受け入れています。一般人も彼らの宗派に改宗すればアーミッシュになれます。

しかし実際には、興味をもってコミュニティに参加してみる人は多いものの、周りから名前を覚えられた頃にはいなくなってしまうことがほとんどだそうです。

またアーミッシュの夫婦がコミュニティ外から養子をとることもあります。そうした子どもたちが成人してアーミッシュになることを選択することもあります。

またアーミッシュとの結婚を決めた外部の人が改宗して、アーミッシュになることもあります。しかし、一般的にアーミッシュは再洗礼の後に結婚を決めるので、こうしたケースは稀なことです。

アーミッシュの負の部分 理想と現実

俗世から離れて農業を行うコミュニティというと、日本ではヤマギシ会を思い出す方もいるかもしれません

ヤマギシ会は「無所有・共用・共活」の理念のもと、自分たちの土地で農業を行っている組織です。wikiには「あと200年後には世界中が地上の楽園〈ヤマギシズム社会〉に革命される」と主張していたとあります。

理想は高かったものの、子供に暴力を振るったり、若い女性に中高年男性との結婚を強いるような内情が明らかになり、90年代には大きな批判を受けました。

こういった一般社会から隔絶されたコミュニティでは、女性や子供の立場が弱くなる問題点がよく指摘されます。
アーミッシュなど、欧米のこうした集団でも、それは例外ではありません。

アメリカの検索エンジンでアーミッシュの犯罪というと、以下のような記事がすぐにヒットします。

出身女性が語るアーミッシュのレイプカルチャー」(ハフポスト)
アーミッシュコミュニティ内の性的虐待」(ABCニュース)
(リンク先は英語です)

・・・司法の目が届かない、咎める者の少ないコミュニティの負の部分ですね。

 

アーミッシュの歴史と暮らし(youtube)記事内の画像はこの動画からのものです

http://amishamerica.com/#head2011
https://en.wikipedia.org/wiki/Amish
https://www.usatoday.com/story/news/nation/2014/08/15/amish-ten-things-you-need-to-know/14111249/

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